ここにゴミを捨てないでください

西武池袋線椎名町or有楽町線要町が最寄り。リサイクルショップ&何でも屋のピックアップです

ピックアップとにだてん

 にだてんは二代目店長の略である。
 なんの店長かと言えば、東京は豊島区にあるリサイクルショップ「ピックアップ」の店長である。
 
 にだてんはかつて社畜業をしていた。
 それは優秀な社畜であり、早朝に行けと言われれば日の昇る前に出かけていき、深夜に来いと言われればいつ終わるとも知れぬ宴席にも付き従った
 社畜業とは日本の基幹産業であり、社畜と呼ばれる人々を主にコンクリート製の檻に集め、机に座らせたり放牧したりする。
 すると、いずこともなくお金が集まってくるのである。
 社畜はその集まったお金の中から、いくばくかの分け前をもらい、日々の糧を得ているのである。
 
 にだてんは前述の通り優秀な社畜であった。
 優秀であったのですで15年以上にわたり、様々な牧場を巡ってきた。
 しかし優秀すぎたにだてんはある日、毎日檻に入り、様々なボタンが並んだ機械を突っつき、月末になるといくばくかのお金をもらうこの生活というものが非常に滑稽に思えてきたのである。
 事実滑稽なので仕方がないのであるが、どうにもにだてんは「もちべえしょん」というものが保てなくなった。
 別にそんなものなくても座っていればお金が出てくるので、そうすれば良いのであるが、律儀なにだてんは豊島の大親分であるえらてん氏に相談を持ちかけたのである。
 
 それはたしか去年の夏、しゃぶしゃぶに呼ばれた日であった。
 
「えらてんの親分、あっしはどうにも社畜業ってえのが性に合わねえような気がするんです」
「そうか。そんなら、俺の持ってるリサイクルショップ、あれぁどうにも手が足りなくて困ってるんだ。なんならお前、このシノギやってみるかい」
 
 こうした経緯でにだてんはにだてんとなったのであった。
 ちなみににだてんは、えらてんがえらてんになる前からの付き合いであり、そこらのぽっと出ファンとは違うという事は声を大にして言っておきたい。
 
 さて、縄張りを継ぐことになったが、社畜の社会も仁義には厳しい。
 社畜の親分に足抜けの相談に行ったが、おいそれと首を縦に振ってはくれぬ。
 指を落とせ、それはできねえ、と押し問答の末、五体満足に放免する代わりに年末まできっちり務めあげろ、という具合に相成った。
 この資本主義社会において、時間を切り売りして労働力に換えるというのは立派な取引である。
 
 年末までの二足のわらじにてんやわんやは蛇足であるので省くが、優秀なにだてんはなんとかそれを乗り切ったのである。
 
 さて、このピックアップという店にはオクムラ氏という書生が住み着いている。
 住み着く代わりにあらゆる雑用や、力仕事を手伝わしているのである。
 このオクムラ氏、金儲けの話には非常に詳しい。いや、金儲けの話というと語弊があろう。
 一発当てる話には非常に詳しいのである。
 ギャンブル、先物取引などの話になると途端に饒舌になる。
 しかしながら、にだてんはオクムラ氏が儲けているのを見たことがない。
 儲けているのを見たことがないが、金を使うところも見たことがない。
 本は図書館、食べ物はスーパーの半額である。いったい彼は金を儲けて何に使いたいのであろうか。
 
 オクムラ氏は言う。
「お金がたくさんあるのを見たいんです」
 ならば汗水を垂らして働くべきだと言うと、オクムラ氏は遠くを見る目つきで言うのであった。
「楽して儲けたいなあ・・・」
 
 ピックアップとは、現状このような二人が稼働している。
 何かあれば呼ぶと良い。あなたのために駆けつけるであろう。