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にだてんとお正月

 新年之御慶目出度申納候
 御贔屓皆々様愈々御淸榮にて御越年遊ばされ候段大賀至極奉存候
 茅屋無事新年を迎へ候條乍憚御安意被下度候
 舊年は御高庇に預り有難く御厚禮申上候
 尙本年も相變らず御懇親の程奉願候

 

 さて、明けて新年である。
 特筆するほど面白い事があったわけではないのだが、正月になると思い出すことがある。
 以前住んでいた某所の近くには寺があり、例に漏れず越年の折には除夜の鐘を撞く事ができた。
 都心というほどの場所ではなかったので、大混雑と言うほどではなかったが、さすがに年の変わる瞬間にはそれなりに大勢の人々が集い、屋台も立ち並び、ちょっとしたお祭り気分が味わえたものだ。

 その寺は由緒だけはやけに古く、それ故にかあまり変わった事をしない、伝統を墨守する寺であった。
 しかしその年、先代住職の急逝により、息子である副住職が後を継いだ。
 彼はレゲエマニアで有名であり、そのドレッドヘアを剃る事が嫌で長いこと逃げ回っていたものだった。
 その彼が住職になった最初の大晦日、予想どおり境内はラスタカラーに彩られ、賑やかなレゲエミュージックが大音量で流れていた。

 異様な雰囲気であるが、まあ所詮は宗教に無関心な日本民衆である。
 密教でもないはずの寺の境内に護摩壇が置かれているのを疑問に思う人もいないようだった。

 

 やがて鐘が撞かれはじめた。
 一つ鐘が鳴るごとに護摩壇にもぐさのようなものが投げ込まれる。
 もうもうたる煙が上がる。

 その煙を吸うごとに煩悩が一つずつ消えていき、108回撞き終える頃にはあらゆる苦悩から解き放たれていたのであった。

 あの夢のような大晦日はなぜか二度と訪れなかった。
 レゲエ好きのあの住職の姿も、あの日以来目にすることはなかった。

 

 

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