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にだてんと猫

 にだてんは猫が好きである。
 犬も好きでどちらが好きかと言われると悩ましいのであるが、とりあえず猫は好きである。

 初めて猫を飼ったのは小学校に上がる前だったと思う。
 ペットショップのシャム猫と日本猫の間にできた、なさぬ仲の子であった。
 今でこそ「ミックス」などと呼ばれているが、当時彼らは「雑種」と呼ばれ、値もつかず放り出されるだけであった。

 当時、そのような猫が生きていくためには、ヤクザになるか軍人になるしかなかったのである。
 白く、尻尾の長い美しい猫だった彼は、にだてん家の対ネズミ戦闘部隊へ配属されたのだ。

「話しかけられたとき以外は口を開くな!  口でクソたれる前と後に“にゃー”と言え分かったか、ウジ虫ども!」
「にゃーにゃーにゃー」
「ふざけるな! 大声だせ! 玉落としたか!」(※1)
「にゃーにゃーにゃー!!」
「スキン顔、名前は?」
「にゃー、ホワイト二等兵です! にゃー!」
「ふざけるな! 本日よりタマ二等兵と呼ぶ。いい名前だろ、気に入ったか?」
「にゃーにゃーにゃー!!」
「聞いて驚くな、タマ! うちの食堂ではサザエさん定食は出さん!」
「にゃーにゃーにゃー!!」

 こうした厳しい訓練をくぐり抜けて我が家に配属されたタマ二等兵は、ネズミ殲滅作戦に従事し、大きな戦果を上げた。
 退役するまでに、パープルハート勲章、シルバースター勲章を授与され、二等軍曹で名誉除隊。
 15歳でなくなった後、にだてん家の庭の一角に「タマ大明神」として祀られている。

 タマはその育ちと、絶え間ない戦場のストレスにより、おとなしいとはいえない猫だった。
 ネズミとの戦闘になると、狂的に昂ぶるのを何度も目撃したことがある。
 タマに一度、「よく女子供が殺せるな」と聞いたことがあった。
 タマは、「簡単さ! 動きがのろいからな! ほんと戦争は地獄だぜ!」と大声で笑いながら言った。

 そのタマも退役後はすっかり丸くなり、戦争を知らない後進達を相手に昔語りをするようになっていた。
 東京で暮らし、道を行き来する野良猫たちを見るたびに、ネズミたちとのあの忌まわしい戦争を思い出さずにはいられない。
 猫たちに平和あれ。
 資本主義のネズミどもに鉄槌を。


※1:余談であるが、タマは後年、獣医にて玉を落とすことになった。

 

 

 

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