にだてんから新社会人へ
この時期、 様々な人たちから新社会人に向けてアドバイスが送られる。
不肖にだてんも、あまり豊かではない人生経験から、 新社会人へ大事なことを伝えようと思う。
多くの人はそれまで重要な責任を負うこともなく、 今まさに初めて見る景色に戸惑っていることだろう。
そしてまた、たくさんのメディアから「こうあるべきだ」 というプレッシャーを受けているに違いない。
しかしだ、諸君。
ビジネスマナーや、仕事へのビジョン、 そんなことより大事なことがあるのだ。
それは生き延びることである。
生存は何にも勝る人生の目的である。
新社会人の諸君は、決して死んではならない。生き延びるのだ。
ここで、少しにだてんの昔話をしよう。
にだてんは京都の大学に通っていた。
卒業を控えたある日、にだてんは親友のSと夜の街に繰り出した。
残りわずかな学生生活を楽しもうと、その日は二人で痛飲した。
何軒回ったかわからなくなったころ、 Sがにだてんの前にサインをするようにと紙を差し出してきた。
クレジットカードの伝票にサインを、と言われたのだ。
ひどく酔っ払っていたにだてんはよく確認することもなく、 そこにサインをしたのだった。
伝票にしてはやけに大きい紙だと思ったことを覚えている。
翌朝、 二日酔いでひどい頭痛をかかえたにだてんは見知らぬ男たちに起こ された。
彼らはにだてんのサインが書かれた書類をかざして、こう言った。
「君は本日の午前0時をもって、我々アスラン空軍外人部隊に編入された。これからの行動はすべて我々の指示に従ってもらう」
そう、前の晩にSにサインさせられた書類は、外人部隊との契約書だったのだ。
Sが何を思ってそんなことをしたのか知るよしもない。
それから3年。
地獄の一丁目と呼ばれたエリア88で、にだてんは生き延びた。
運が良かっただけかも知れない。
にだてんがとりわけ有能であったわけではない。もっと優れた戦友も散っていった。
しかし、生き残れたことこそが、今につながっているのである。
元アスラン空軍外人部隊エリア88所属
最終階級は大尉
除隊になるまでの総撃墜数92機
対地目標物撃破約230輛
指定目標攻撃率86%
出撃率95%
自己損失12%
これが、にだてんという男のすべてである。